インストラクターの方は実感されている方も多く言うまでもないこうとかもしれませんが、
『ヨガをした後は気分が楽になります』『ヨガを始めてから考え方が変わりました!』という言葉をよく聞きます。
クライアント様もそういう部分を求めにレッスンを受けられている方が少なからずいると思います。
では、なぜヨガをするとポジティブになれるのでしょうか?
インストラクターの先生はこの質問に対してどのようにお答えしていますか?
なんとなく脳に良いことは知っているけど詳しく説明して欲しいと言われると説明が難しいと感じる先生が多いのではないかと思います。
とういことでとういことで今回は
ヨガをすることでなぜポジティブになるのか?
ということについて書いていきたいと思います。
ヨガをすると本当にポジティブになるのか?
まずは『ヨガをすることで本当にポジティブ思考になれるのか?』ということです。
これは74名を対象とした研究で効果があることがわかってきており、
「ヨガの心理的効果についての調査研究 」1) で発表されています。
この研究では
はじめてレッスンに通ったとき、約1ヶ月後、約2ヶ月後、それぞれで心理的な変化を点数にして測っています。
その結果
はじめてレッスンに通った時に比べて、2ヶ月が経過した段階で「自尊感情」「人生への満足感」「意欲」が上がって、「失敗への恐怖」「完全主義」「対人不安」が下がったという結果が示されたそうです。
この研究では、ヨガをすることでポジティブな思考の点数があがり、逆にネガティブな思考の点数は減少しているということがわかります。
この研究からもヨガをすることで、ネガティブな思考が少なくなり、ポジティブな感情が高まるということがわかります!
ただすぐに変化が現れる人もいますが、回数を重ねていく方がより点数の変化が大きかったことから、約2ヶ月ほど続けておこなう方が、心の変化は現れやすいのかもしれないですね。
これからどうやってポジティブになるのか?
ということについてお話ししますが、その前にまずはネガティブ思考について理解してもらう必要があります。
なぜネガティブ思考になりやすいの?
人の思考は環境や人間関係やこれまで教えられてきた考えで大きく変化するため一概にこれだ!ということは言えないのですが、
今回はヨガの効果をよりちゃんと説明できるように脳の働きから説明したいと思います。
感情というのは「前頭葉」と「扁桃体」のバランスによってコントロールされており、特にネガティブな思考は扁桃体と深く関係があると考えられています。
本能的な感情は扁桃体(へんとうたい)
扁桃体は本能的な部分を司り、食欲や性欲や感情(喜怒哀楽)を司っています。
嫌いや不安・恐怖というのはこの扁桃体が興奮することによって高まります。
感情のコントロールは前頭葉(ぜんとうよう)
前頭葉は脳の前の部分の領域のことで、ヒトの脳は他の生物に比べてこの前頭葉が発達していると言われてます。
この前頭葉には思考や判断を司り、理性を保ったり、自己を客観的に捉えることや感情をコントロールする機能があります。
ネガティブな思考は扁桃体と前頭葉のバランス
ネガティブは本能的な感情で、扁桃体は危機を回避するために必要な部分です。
原始時代のような周りに敵だらけで、常に命の危険に晒されて日常を過ごさないといけない状態ではこのネガティブな思考は非常に重要な役割を果たします。
本能的な部分だけだと理性的な判断ができずに衝動的な感情でものごとを考えてしまいやすくなり、
現代社会で生き抜くためには、それよりも人間関係や社交性などが重要視されネガティブでずっといる訳にはいきません。
本能的に行動しないために前頭葉が働き本能的な部分にブレーキをかけてコントロールしているんです。
通常は前頭葉がしっかりと働いているため、人間はその他の動物のように本能的に行動することなく、客観的に自分を見ることができ、理性的にものごとを考えることができるんです!
ただ、ストレスなどが長期間続くと扁桃体は大きくなり前頭葉は機能が弱くなってしまいます。
すると本能的な感情が高くなりやすくなってしまい、不安や恐怖を感じやすく、イライラや感情のコントロールが難しくなってくるので、ネガティブな思考に陥りやすいと考えられます。
瞑想は脳を活性化させる!
瞑想は前頭葉と関係があり、最近では「マインドフルネス」などとも呼ばれ、脳科学の分野でも研究がされています!
この内容はテレビでも紹介されていましたが、
瞑想(マインドフルネス)が前頭葉を活性化したという報告があります。
この研究では3日間マインドフルネスをおこなった人達とリラックスだけをした人達で脳にどのように変化があるかを実験しており、
前頭葉の一部であるdlPLC(背外側前頭前野)と呼ばれる部分が、リラックスだけをした人に比べてマインドフルネスをした方が活性していることがわかりました。
その他にも
扁桃体がマインドフルネスを2ヶ月おこなうことで、小さくなったという報告もあります。
『Stress reduction correlates with structural changes in the amygdala』3)
この研究では約2ヶ月間、毎日マインドフルネスを20分間おこない続けたところ、ストレス値の減少とともに扁桃体が小さくなったとされています。
これらのことから、
ヨガの特に瞑想(マインドフルネス)は脳に働きかけることができ、脳が活性されてネガティブな感情コントロールすることで、ポジティブな思考に変えていくとことができると考えられます。
まとめ
ヨガをするとなぜポジティブになるのか?
では、今回の本題である「ヨガをするとなぜポジティブになれるのか?」ということですが、
これまでネガティブ思考について説明しました。
大事なのは東洋医学の「陰陽論」考えで「陰がなければ、陽は存在できない」とあるように、ネガティブという概念がないとポジティブは存在しないということです。
なぜかというと、ポジティブ思考しかできないという人は、それは当たり前でありポジティブでもネガティブという考え自体が存在しないからです。
でもそんな人はいません。
ネガティブ思考があるから、ポジティブ思考になれるのです。
ネガティブな思考とは人間の本能的な部分であり、生きていく上ではとても大事な思考です。
ただ、ストレス負荷が大きいと感情のコントロールが効かなくなりネガティブな思考が強くでてしまうのです。
これまでお伝えしてきた研究から、ヨガの特に瞑想(マインドフルネス)で雑念を取り払って集中することは、感情のコントロールをしやすいように脳に働きかけることができるということがわかってきています。
よって、
ヨガをすることで、脳が活性化され客観的に物事を考えられるようになり、ネガティブな感情をコントロールできるようになることで、ポジティブな思考になっていくと考えられます。
ただ、ヨガをすることで脳自体に影響を与えるだけが大切なのでなく、ネガティブな感情を受け入れること、そしてネガティブな感情をコントロールすることができるようになることで、ポジティブな思考が生まれてくるというのを理解しておくことが大事である思います。
参考論文
1) 古宮 昇, 谷口 弘一. "ヨガの心理効果についての調査研究" Japanese Journal of Counseling Science. 2011,44, p.110-117
2) Hölzel, BK : Carmody, J: Evans KC. et al. Stress reduction correlates with structural changes in the amygdala. Soc Cogn Affect Neurosci. 2010, Mar; 5(1): p.11–17.
3) Taren, AA: Gianaros, PJ: Greco, CM. et al. Mindfulness Meditation Training and Executive Control Network Resting State Functional Connectivity: A Randomized Controlled Trial. Psychosom Med. 2017, Jul-Aug; 79(6): p.674–683.