「最近手が痺れて手に力が入りにくい」「手にピリピリとした感覚がある」など、手にしびれを感じている方がおられたり、レッスン中にもそういった訴えがあるのではないでしょうか?

手の痺れの症状は手首から来る場合や腕が原因でおこる場合、糖尿病で神経に障害がおきている場合など原因は様々です。
難しいポーズや動きをおこなうときに、気をつけないといけない部分である首ですが、首が原因でしびれがおこる場合があります。
今回はレッスン中に気をつけておかなければいけない首からおこる痺れについて説明していきたいと思います。
痺れ(しびれ)ってなんでおこるの?
痺れは『ピリピリする』『チクチクする』といった感覚に異常がおこる場合、『触った感覚が無い』といった感覚が弱くなる場合や、『力が入りにくい』といった運動機能が落ちる場合など症状は多彩にあります。
これら痺れの症状と大きく関わっているのが『神経(しんけい)』です。
神経になんらかの異常がおこっていると、上記のような痺れの症状がおこります。
神経について
痺れについてお話しする前に少し神経について説明したいと思います。
神経の働きは『情報を伝える』!
神経には『情報を伝える」という働きがあり、手や足、腰などから受けた刺激を脳に伝えたりや逆に脳からの司令を手足に伝える働きがあります。

神経は全身に巡らされており、色々な情報を伝えています。
全身に巡らされている神経は背骨にある太い神経『脊髄神経(せきずいしんけい)』から別れて伸びていきます。
その反対に手足に伸びている神経の伝達も脊髄で統合されて脳へと伝わります。
この神経がなんらかの原因で圧迫されたり、神経に障害があると情報の伝達に異常がおこり痺れとなってあらわれます。
首が原因の痺れに違いがあるの?
先ほど説明したように背骨にある太い神経から全身に神経が伸びており、背骨の首の部分である『頚椎(けいつい)』からの神経は手に伸びています。
頚椎一つひとつから神経が伸びており、どこの頚椎から伸びているかで手を支配している領域が変わります。
この領域のことを『皮膚分節(ひぶんせつ)』:デルマトームと呼びます。


皮膚分節を知っておくと、首のどこで障害を受けているか判断することができるので、是非覚えておいてください!
*第8頚椎と書かれておりますが、頚椎は7個しかありません。
何故「第8頚椎」と書かれているかというと頚椎から出る神経の出方に関係しています。
少し難しい話になりますが、
頚椎から出ている神経は椎骨の上から出ています。
なので、頚椎の3番目と頚椎の4番目の間から出ている神経は『第4頚椎神経』となります。
逆に胸椎の神経は椎骨の下から出ています。
なので頚椎の7番目と胸椎の1番目に名前が付けられないので、「第8頚椎神経」と呼ばれています。
首からおこる痺れはどんなものがあるの?
首に異常がおこると、首の骨から出ている神経が障害されてしまい首の痛みだけでなく手のしびれがおこります。
今回はしびれをおこす首の疾患をご紹介します。
頚椎症(けいついしょう)
頚は、頚椎と呼ばれる7つの骨で構成されています。
骨の内側には脊柱管という神経の通るトンネルがあり、頚椎を通る神経を『頚髄(けいずい)』と呼びます。
そして、頚髄から分岐している『神経根(しんけいこん)』が、頚椎の骨と骨の間から腕や手に向かって伸びています。
加齢による頚椎の椎間板の変形や靭帯が厚く硬くなって、頚部の痛みなどの症状が発現したものを総称して、『頚椎症(けいついしょう)』と呼んでいます。
神経根や脊髄が圧迫され、頚や肩甲骨付近の痛みや、頚肩から腕や手にかけて痛みやしびれを生じることもあります。
頚椎症によってトンネルの中を通る頚髄が圧迫される病気を『頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいけいずいしょう)』、首から手先までつながる神経根が圧迫されて症状が出現する病気を「頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)」と呼びます。 また両者を同時におこすこともあります。
頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)

加齢などによって首の骨と骨のクッションの役割を果たす椎間板や骨が変形してしまい、頚椎の神経根を刺激することで片側の手や腕、肩にしびれなどの症状が現れる病気です。
症状の特徴としてしびれと痛みは左右どちらか片側に現れることが多いといわれています。
また一般的に首を後ろに反らすと痛みが強くなるため、上方を見ることや、うがいをすることが不自由になります。
上肢の筋力低下や感覚の障害が生じることも少なくありません。
頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)

加齢による頚椎の変形を基盤とし、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、脊髄が圧迫される病気です。
さらに加齢による頚椎の不安定化が存在する場合には動的な圧迫が脊髄に加わり障害を増幅させます。
大きい神経である頚髄神経が圧迫させるため、手だけでなく足のしびれなどの感覚異常が見られます。
徐々に手先の細かい作業が不自由になったり、筋力低下や膀胱直腸障害(便秘や頻尿など)も見られることがあります。
首の神経障害の判断
首の神経の障害を判断する方法として、今回は臨床でよく使う『ジャクソンテスト』『スパーリングテスト』『ホフマン反射』の3つを紹介いたします。
1. ジャクソンテスト
患者が座った状態で、後方からおでこに両手を置き頸椎を下方に圧迫します。 頸部から背部~上肢への放散痛やしびれ感があれば、陽性と判断されます。
陽性になった場合は頚椎の神経根に障害が起きている可能性があります。
2. スパーリングテスト
スパーリングテストは、神経根障害を調べるためのテストです。 患者が座った状態で、頭を傾け、患者の後方から患者の頸椎を下方に圧迫します。 頸部~上肢へかけての放散痛やしびれ感があれば、陽性と判断されます。
陽性の場合は頭を傾けた方の神経根に障害が起きている可能性があります。
3. ホフマン反射
患者の中指の第二関節のあたりを示指と中指で軽くはさみます。
自分の親指で抑えた中指の爪側からおさえて弾きます。
弾いた時に指の屈曲が現出すれば陽性所見となります。
陽性の場合は脊髄に障害が起きている可能性があります。
まとめ
首が原因でおこる痺れを考える時は、まずは『ジャクソンテスト』『スパーリングテスト』『ホフマン反射』をみるようにしましょう!
これらで陽性の反応がみられた場合は、痺れがおこっている場所(デルマトーム)を確認してどこの頚椎が原因で起こっているかを確認しましょう!
上記のものに症状が当てはまらない場合は、首よりも手側の方で神経が障害されている可能性があります!首以外の神経障害については別のところでお伝えさせていただきますね。
首が原因で神経が圧迫されている場合は急激に動かすような動作や無理な動作で症状が悪化する場合がありますので、ゆっくり首を動かすようにしていきましょう!